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『不動産投資で絶対にやってはいけない18のこと』を読んで

「守り」の常識を超え、不動産投資の「深淵」へ踏み込むために

不動産投資という荒波に漕ぎ出す際、多くの投資家がまず手に取るのが「失敗を避けるための処方箋」である。今回手に取った『不動産投資で絶対にやってはいけない18のこと』も、タイトルから推察される通り、初心者が陥りがちな落とし穴を網羅的に解説した一冊であった。しかし、読後感として率直に抱いたのは、期待していた「未知の知」への到達感よりも、既知の情報をなぞる「確認作業」に終わってしまったという、ある種の物足りなさである。

本書で語られている「絶対にやってはいけないこと」の多くは、投資家としての良識や、一般的な商慣習の範疇に収まるものばかりだった。例えば、「契約後のキャンセルは原則不可」であることや、「手付金を支払った後の自己都合キャンセルでは返金が望めない」といったルールは、不動産に限らず高額な取引を行う上での「いろは」である。もちろん、これらの基本を疎かにして破滅する初心者が後を絶たないからこそ、警鐘を鳴らす意義は否定しない。しかし、ある程度の基礎知識を備え、実戦を見据えている身からすれば、これらは「新情報」ではなく「前提条件」に過ぎないのだ。全18項目のうち、私の知的好奇心を刺激する真新しい情報はわずか1つか2つ。読み進めるうちに、「そこから一歩先、さらに踏み込んだ実戦の機微を教えてほしい」という欲求が募るのを禁じ得なかった。

私が本書、あるいはこれからの不動産投資論に期待していたのは、もっと泥臭く、社会の構造に深くメスを入れるような視点である。不動産投資の市場には、煌びやかなタワーマンションや安定した新築ワンルームだけが存在するわけではない。現実には、日々の生活が困窮している人々、いわゆる「住宅弱者」と呼ばれる層の受け皿となるべき古い物件や、再生が必要な不動産が溢れている。

本来、不動産投資の真髄とは、そうした「市場から見捨てられかけた歪み」を拾い上げ、価値を再定義することにあるのではないだろうか。生活が苦しい人々を対象とする場合、物件選びの基準は、本書で語られるような一般的な「駅近・築浅・好立地」というセオリーとは全く異なる次元になるはずだ。入居者が何を最低限必要とし、どのような環境であれば持続可能な賃貸経営が成立するのか。その「対象者に寄り添った不動産の選び方」こそが、投資家としての真の腕の見せ所であるはずだ。

また、コスト管理の面でも、より具体的な「破壊的イノベーション」に触れてほしかった。リノベーションにおいて、単に大手業者に丸投げして綺麗にするのではなく、いかにして安く工事を収めるか。どの部分に安価な素材を使い、どの部分に一点豪華な工夫を凝らすことで、低賃料でも満足度の高い空間を創出するのか。DIYの範疇を超える職人との直接交渉術や、廃材の活用、あるいは特定のニーズに特化した間取りへの変更など、徹底した低コスト化と価値最大化の両立——この「安く作り、安く貸す」というサイクルを、ビジネスとしていかに成立させるかという泥臭い方法論にこそ、深いメスを入れてほしかったのである。

不動産投資を「不労所得を得るためのスマートな手段」と捉えるなら、本書の教えを守るだけで十分かもしれない。しかし、私が求めているのは、社会の格差や住宅難という課題に直面しながら、その「解決策」をビジネスとして昇華させるためのヒントだ。表面的な契約トラブルの回避術ではなく、出口の見えない古い物件をどう再生し、支援が必要な人々に居場所を提供しつつ、自らも利益を確保するか。そのギリギリの攻防戦の中にこそ、不動産投資の本当の面白さと醍醐味があるのだと感じる。

結論として、本書はこれから投資を始める人にとっては良き「安全確認リスト」にはなるだろう。しかし、すでに基本を血肉とし、一歩踏み込んだ戦術を模索している者にとっては、あまりに教科書的で、現場の熱量に欠ける嫌いがある。私が真に読みたかったのは、綺麗事では済まされない不動産投資の「深淵」と、そこから這い上がるための具体的な泥臭い技術であった。今回の読書を通じて、自分の中に眠る「社会貢献と投資を両立させたい」という野心と、それを実現するための知識への渇望を、図らずも再確認することとなった。

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